再会と初対面

「農園の自然」の観察エリアは,
家の周りと畑の周りの面積を合わせると大体20,000平米くらいでしょうか.
まさに「人間が利用しながら自然と共生してきた」といわれている「里山」環境の中にあります.
山がちな地形なので,斜面の方向や,植生も多様で,湧水から始まる小さな溜池,小川,湿地(休耕田)が有り,
水環境も多様です.
畑周りは,茅場,雑木林,ヒノキ林,とこれも多様な生物の生息環境を作り出しています.

高校時代の生物部に始まったナチュラリストライフも終盤に差し掛かって,残り時間を惜しむかのように
この恵まれた環境での観察を楽しんでいます.

見ようとしないと見えないもののいかに多いことか.
たったこれだけの広さの中ですがまだまだ見たことのない生き物が見つかります.

全部を見よう,全部を知ろう,なんていうことは不可能とは知りつつ,毎日の新しい出会いに感動をもらっています.

また,前に出会った生き物との再会も感動ものです.
別個体とは分かっていても「また会ったね」と心の中でご挨拶.

そんな出来事のいくつかを.


<再会>この美しい毛虫(芋虫)は,ウスタビガの若齢幼虫です.
冬の枯れ上がった雑木林の枝先に美しい緑色の繭がぶら下がっているのを見たことが有りませんか.
あの繭を作ったのがこの幼虫です.
繭は目立つので良く見つかりますが,幼虫は緑の葉にまぎれてめったに見ることは有りません.

<再会>まるで人の顔のような形のこの造形物は,ピストルミノガという蛾の幼虫の巣です.
ミノムシの 蓑が高度に芸術的になったようなものでしょうか.
大きさは数ミリなのでこれもなかなか見つかるものでは有りません.
前回は,桜の葉にいましたが今回はコナラの葉で2匹も見つけました.

<再会>ヒオドシチョウという 蝶の前蛹(蛹になる前の状態)です.
今年はエノキに大発生していて,脇にある鶏小屋のトタン屋根の下にこんな小さなオブジェがたくさんぶら下がっている光景が見られます.
何年か前にも大発生があって,そのときは今回の何倍もいて蝶小屋状態でした.まもなくもう一回脱皮して白い蛹になります.

<初対面>ミズキの葉に付くヒトツメカギバという蛾の幼虫です.
普段は葉を袋状に巻いてその中にいるので眼につきません.袋を開いてみて初めてその存在に気がつきました.(失礼)
見つけたときは,てっきり蝶の幼虫と思い込み調べていたのでなかなか種名にたどり着けず,「角のある幼虫」などの検索を繰り返して
やっと判明したときには,その発見の喜びもあったりします.

<初対面?>ヒカゲチョウの幼虫です.イネ科のタケ,ササ,ススキなどを食べるのですが,何故かコナラの葉にいました.
それでまた同定に時間がかかってしまったのですが,おそらく終齢幼虫が蛹になる場所を探してうろついていたのだろうと推測されます.
今部屋の中で蛹になってぶら下がっています.

<初対面>カタビロトゲハムシというハムシの仲間らしいです.
ヤマグリの葉の上で交尾をしていました.遠めに見たら小さなゴミにしか見えません.
似ているものが多くて正確な同定は難しいです.
以前は「トゲトゲ」という名前で通っていたようですが,こっちのほうがユーモアがあってよかったような.

<初対面>コムラサキの幼虫です.イヌコリヤナギの葉にいました.
この蝶は河原などの環境を好むとされているので,農園内での発見はびっくりでした.
子供のお達しで現在飼育中です.オスだといいのですが.

本当は,もっと目立たずひっそりと生きている生き物がたくさんいるのですが,好きも嫌いも偏見まみれなのが人間です.
スポットライトの当たらなかった生き物たちには「ご免なさい」です.
ではまた.