蛾の幼虫,飼育観察報告,2題

昆虫の世界には,まだまだ未知の部分が多いです.
未だに名前もついていない虫,名前が付いていても生態が分からない虫など沢山います.
蝶のように,種類数が少なく,研究者やマニアの多い分野はいざ知らず,マイナーな昆虫は,
まだまだ新知見が得られる,素人研究者(?)にとっては絶好の穴場といえるかもしれません.

バンビ 農園でのバンビ やんの自然観察でも沢山の不明昆虫が見つかります.
ネットで調べたり,問い合わせのできるサイトで教えてもらったりができる便利な時代ではありますが,そこから得られる情報にも限度がありますし,正確さという面でも完全ではありません.

そこで,農園のポリシー「自給自足」に準じて,飼育観察などが始まってしまうわけです.
たとえば農園内で見つけたこのイモムシは何者だろう,と思ったら,飼育して成虫を出せばよいわけです.
子供の自由研究と同じことをするわけですね.

こんな,「バンビの自由研究」から,この夏2種の蛾の生態の一部を解明できたので,このブログで紹介します.

ちなみに,現在名前の付いている蛾は3000種を越すといわれていますがまだまだ未知だらけの世界です.
この情報がいつか必要とされ方の目にとまる事があれば幸いです.

ギンツバメの幼虫飼育
幼虫発見の経緯は、農園内に自生するフナバラソウの管理です。
ナバラソウは栃木県では絶滅危惧A類に指定されている希少植物です。
農園の一角に、たった一株の存在を数年前に見つけた事から、毎年生育を見守っています。
ここ数年は、生育初期に食害をするガガイモハムシの駆除(手つぶし)に追われていました。
今年は、このガガイモハムシとの攻防に負けて、きわめて貧相な成長に留まっていました。
その弱々しいフナバラソウに小さなイモムシを見つけました。( 8月8日)

素人は絶滅危惧種を食べる虫はやはり希少なものかもしれない、と思ってしまいます。
ここから飼育が始まるわけですが、フナバラソウを餌にするわけにはいかないので、同科
(ガガイモ科)のガガイモに移植してみました。これはすんなりと食べてくれました。
たった1匹の幼虫でしたが無事老熟にいたったようです.


終齢段階では葉を巻いてその中で繭化しました。(8月13日)

8月19日には羽化しました.
羽化までの日数は5日というスピード羽化でした。


この羽化した成虫は、農園内でも良く見るギンツバメでした。
幼虫はあまり特徴がないので、ネット上でも画像が見当たりませんでした。
ガガイモ科植物にこんな幼虫が付いていたら「ギンツバメ」を疑ってみてください。


ナカスジシャチホコの幼虫飼育

農園脇のヒノキ林内に生えていたウワミズザクラに見つけた(7月15日)幼虫です。


幼虫図鑑というサイトに問い合わせたところ、「ナカスジシャチホコ」ではないか、という
回答をいただきました。これも、ネット上からは幼虫についての情報が得られず、飼育羽化に挑戦してみました。

2匹飼育して、1匹からは寄生昆虫のものと思われる小さな繭がいくつも出ました.

幸いもう1匹は無事に繭化し9月7日に羽化しました。


やや不完全羽化でしたが、ナカスジシャチホコの成虫画像と見比べたところほぼ間違い無さそうでした。
蛹化は,浅い土の中に糸を絡めたやや不完全な繭状の袋を作って,その中で行われていました.

食草に関しては、ナナカマド、マメザクラなどと有りましたが(みんなで作る日本産蛾類図鑑参照)、ウワミズザクラは見当たりませんでした。食草の範囲がやや広がる知見となるのかもしれません。

以上2点、この夏の「バンビの自由研究」でした。