北沢地区汚染拡大未然全防止対策説明会

北沢地区というのは、19年前に大量の不法投棄があった場所です。
この処理を巡り、「県営の管理型処分場を造って解決を図る」という、
地元住民にとっては、なんとも理不尽に思える方策が画策され、推し進められてきました。

この計画に疑問を持った反対住民と県の対立は延々と続いています。

計画は、地元住民の合意のないまま横車を押すように進められ、<納得と合意のない説明会>や<いい加減な回答しか出てこない意見書提出>という「反対住民は事務処理の邪魔」的扱いを幾度となく味合わされて来ました。

徒労に疲れ、気力、体力が萎えるのをまっているかのようでした。

「不法投棄現場には危険な有害物質があり、汚染拡大の危険がある」として、県は過去に掘削調査やモニタリング機器の設置を行ってきました。

そして19年が過ぎた今になって、「北沢地区汚染拡大未然全防止対策」を行うと発表しました。
不法投棄物が危険であると言いながら100億円超の経費がかかる処分場建設は推し進められ、わずかな費用のモニタリング機器しか与えられずに過ごしてきたこの長い年月は何だったのでしょうか。

とにもかくにも、北沢地区にこのような手が入るのは初めてです。

「もう、毒は全部流れちゃったよ」というあきらめをつぶやく人もいますが、「還元状態で有害物質は現場に停滞しており、状況の変化により流出の危険がある」という県の言い分を信じるならば、それは大変ありがたいこととも思えました。

8月31日、搬入路建設予定地の梅平地区というところの住民対象に第1回の説明会が行われ傍聴してきました。

どのような工事が行われるのかという説明がありました。

簡単に言うと「汚染物質が埋まっている部分にはUV加工のシート(ブルーシートのようなもの)をかけ、その周辺に排水用の溝を掘る。」というものでした。
私は、この方式が実効性のあるものなのかという疑問も大いに湧いたわけですが、梅平の人たちは県の過去の理不尽の追及から始まりました。

これを状況を追って説明すると長くなりますので、以下に提出された要望書、意見書を掲載します。

梅平の人たちは、過去に何度も県との交渉の場を持ち、意見や質問を繰り返してきました。
これらに対し今だ誠意ある回答が出てこないということへの不信感を表明しました。
県の担当者も数年毎に変わることが多く、果たしてまともな引継ぎがなされているのかもはなはだ怪しいということが垣間見える説明会でした。


栃木県環境森林部馬頭処分場整備室 殿
平成21年8月31日
梅平地区住民一同
「北沢地区不法投棄物による汚染拡大未然防止対策」についての要望書
県は「北沢地区不法投棄物による周辺環境への汚染拡大未然防止対策」として、「投棄地に直接降る雨水の浸透を抑制する『表面被覆工』と、隣接地から投棄地への雨水の流入抑制と投棄地表面の水の速やかな排水を行う『雨水排水路設置工』を、平成21年11月〜平成22年1月にかけて実施する予定。」との事ですが、それに関して、下記の3点について要望がありますので、ご検討の上ご回答お願いします。

(1)対策の検討過程について
平成18年3月18日付けで、梅平住民一同として「北沢不法投棄物の応急対策に関する要望書」を県に提出しました。
その中で、「地域住民の健康と農地を守るため、不法投棄物からの汚染拡大を防止する早急な応急対策の実施」と「その方法について町と住民を交えた協議の場を設けた決定」を求めました。
しかしながら、今回の対策工事に関しては、上記の要望に関しての具体的な回答もなく、事前の協議の場は設けられず、さらに県の当該部署に関して不信感を増した結果となりました。
これ以上、不信感を増幅させないよう、対策の方法について、改めて住民を交えた協議の場を設けることを要望します。

(2)対策の方法について
今回の対策では、不法投棄物が埋まった地表面への雨水流入を防止する事が主体ですが、不法投棄地から流出する水に関しては特に対策がなされていません。
住民の安全安心を第一に考えるのであれば、不法投棄物から汚染された水が排出されることを想定して、不法投棄地直下か小口川との合流直前に水処理施設を設置することを要望します。
水処理の機能としては、これまでの県の説明で、鉛とダイオキシンの流出の可能性について示唆していたと思いますので、少なくともその2点について除去できる施設であれば、ローコストで簡易的であっても住民の安全安心を確保できると考えます。

(3)北沢の汚染拡大時の対応マニュアルについて
 平成18年6月の説明会の際に、北沢不法投棄物の汚染拡大時の対応マニュアル(モニタリングの測定値が異常値を示した場合に、県として、どのような手順で汚染拡大を阻止するか検討した手引書))を作成して欲しいと要望しましたが、その後、回答がありません。
平成19年2月25日の説明会で更に確認したところ、「現在、北沢について調査中なので、数ヵ月後にはマニュアルを作る予定」と回答がありました。   
それから既に2年以上経過していますので、対応マニュアルについて速やかな回答をお願いします。



栃木県環境森林部馬頭処分場整備室 殿
那珂川町環境総合推進室 殿
平成21年8月31日
梅平地区住民一同
「梅平地区住民が搬入道路見直しを求め続ける理由」

平成18年2月以来、梅平地区住民一同として最終処分場搬入道路の見直しを一貫して要望してきました。
当初はあくまで、搬入道路周辺の住環境が悪化するという住民の漠然とした不安が反対の理由でしたが、県との10回程の説明会でのやりとりの末、以下のように那珂川町全体として不利益を被る状況がわかってきましたので、那珂川町を愛する地域住民としても今後も搬入道路見直しの姿勢に変りがない事をここに表明します。

それは、搬入道路ができることによって、馬頭最終処分場だけで終わる事なく、その周辺には、複数の民間の中間処理施設や第2第3の処分場の建設の可能性を高めてしまうという事実です。
一般的に管理型最終処分場で処分する廃棄物は、あらかじめ中間処理施設において種類に応じた「焼却、溶融、焼成、脱水、乾燥、中和、破砕、堆肥化、圧縮」などの処理をした廃棄物を受け入れていると思いますが、馬頭最終処分場の計画の中には中間処理施設は含まれていません。
一方、全国の公共関与の管理型処分場は、敷地内に中間処理施設が併設している場合が多く、またそれが併設されていない場合でも、民間の中間処理施設が近隣で稼動している例も見られます。(山梨県発表の資料より)
平成18年8月の説明会で、馬頭最終処分場周辺に中間処理施設ができる可能性を県に確認したところ、「中間処理施設は、工場と同じようなものだから県として問題視していない」との趣旨の発言が当時の蓬田環境局長からあり、県は容認している事がわかりました。
つまり、馬頭最終処分場で受け入れる廃棄物に関しては、民間の中間処理施設がこの近隣で稼動することを、県は想定しているとも考えられます。
また、県によると「県外から搬入された廃棄物」であっても「県内の中間処理施設」を通ることで「県内から排出された廃棄物」であると考える事を認めています。(平成17年に発表された県の見解で「県内の中間処理業者が処理した産業廃棄物は、県内排出事業者から排出された産業廃棄物と位置付けられます。」と回答。)
馬頭最終処分場は「県内から排出される管理型廃棄物」のみを受け入れると県は説明していますが、処分場周辺に中間処理施設ができた場合、全国からの廃棄物を受け入れる事が事実上可能になります。
そして、県営に続く第2第3の民間の最終処分場建設の可能性についても、平成18年に県に確認したところ、設置許可申請を出した民間業者に対して、「作らせないように努力するが、現在の法律では作らせないことは難しい。」との趣旨の返答でした。(既存の処分場と1km離れれば設置可能で、埋め立て完了し閉鎖された処分場であれば隣接していても設置可能である事は、県の廃棄物指導要綱を見れば明らかです。)
また、馬頭最終処分場そのものは、県の管理の元、廃棄物運搬車両の台数制限や、運行時間や、交通マナーは保証されるはずですが、民間の中間処理施設に集まる車両に関しては保障の対象ではなく、施設そのものに関しても例え大気・水質・騒音・振動などの環境基準は守られたにしても総量として増加する事は間違いないので、県の説明以上の環境悪化が予想されます。
さらに県は、馬頭最終処分場に関しては「公害や風評被害が発生した場合は責任をもって補償する」と基本協定において約束していますが、民間の処理施設に関してはそのような補償の対象ではなく地域住民にとって不利益を被る事は必至の事と考えます。(ゴミを出している住民として廃棄物処理施設そのものは否定しませんが、それが過疎地域に集約される傾向に関しては容認できません。)
以上のことから、最終処分場に伴う搬入道路を建設することによって、那珂川町において栃木県内外の廃棄物処理事業の利便性が高まり、その流れは町民自身や町当局でさえ止められず、今後、十数年かけて町の姿が大きく変容し「環境と共生するまち」から「廃棄物と共生するまち」となってしまう可能性を秘めていると考えます。(それが妄想でない事は、那須地域の状況を見れば理解できるはずです。)

私たち梅平地区住民は、既に19年前、近隣の北沢地区で不法投棄が行われた際に、悪臭や農業用水の汚染などの多大な迷惑と、阻止できなかった行政への無力感を体験してきました。その上、それを片付ける為と言う理由によって作られる巨大な処分場だけでなく、搬入道路を作られ、更に、幾つもの廃棄物処理施設が林立する事で、代々守って来た農地と、穏やかな環境が大きく変えられてしまう事は、子々孫々の為にも到底受け入れられるものではないのです。
《県に対して》
住民向けの事業説明では「安全で安心できる処分場」と謳い処分場そのものの安全性を強調していますが、それに伴う上記のような可能性には一切触れず、ただただ処分場建設を強引に推進する姿勢では、いつまでも理解は得られないと思います。県と町民との間で将来に禍根を残さない為にもガラス張りの情報公開と、住民の立場に立った説明を強く望みます。
《町の担当部署に対して》
何故このような可能性を検討していなかったのか、町民の利益を優先すべき担当部署の姿勢に疑問を感じます。これまで担当部署が「県の事業を信頼しているから」と、迷惑施設を受け入れる町民のデメリットに関して検討や説明をせずに思考停止し続けてきた状況は行政の不作為とも言えます。
《町民の方々に対して》
私たちは、県とのやり取りの中でわかってきた事実とそれに伴う不安や懸念が、決して町のためにならないとの思いから搬入道路計画に反対する決意を新たにしました。
梅平地区住民一同の決意にご理解いただき、今後ともご協力をお願いいたします。



栃木県環境森林部馬頭処分場整備室 殿
平成21年8月31日
梅平地区住民一同
平成18年2月以降の説明会における説明内容のご確認と回答のお願い


■■説明内容のご確認■■

平成18年2月以降の説明会において、県側より搬入道路に関するいくつかの具体的な回答がありました。
前担当者より引継ぎがなされていると思いますが、念のためそれらを列挙しますので、ご確認の上、関係者に対する周知と順守をお願いします。


(1)「搬入道路について、和見、小口ルートがつながらない場合には、片方だけつくることは考えていない。」
※ 平成18年2月24日の説明会における回答、または、平成18年9月15日付けの文書。


(2)「今の道路のままで処分場の建設工事を行ったり、廃棄物や北沢の不法投棄物を搬入する事は行わない。」
※ 平成18年2月24日の説明会における回答、または、平成18年9月15日付けの文書。


(3)「地権者に対して用地交渉する場合は、突然の訪問は行わずに、予め電話で都合を確認し訪問する。その際、一度断られたら訪問はしない。」
    ※平成19年1月27日の説明会における回答。


(3)については、全く順守されておらず、地権者宅に突然町長が訪問したり、断っても再度訪問されたり、地権者本人や同居家族が多大な精神的圧力と苦痛を感じています。
約束の順守を徹底し、地権者の人権を考慮した交渉を行ってください。


■■回答のお願い■■

平成18年2月以降、梅平地区住民から当該部署に対して、幾つかの意見や要望を提出してきましたが、未だ全く回答されていないものもあります。
確認の為、それらを以下に列挙しますので、速やかに的確なご回答をお願いします。
また、速やかに回答できない場合は、いつ頃であれば回答できるかの回答は速やかにお願いします。

(4)北沢の汚染拡大時の対応マニュアルについて
平成18年6月の説明会の際に、北沢不法投棄物の汚染拡大時の対応マニュアルを作成して欲しいと要望しましたが、その後、回答がありません。
平成19年2月25日の説明会で更に確認したところ、「現在、北沢について調査中なので、数ヵ月後にはマニュアルを作る予定」と回答がありました。 
それから既に2年以上も経過しておりますので、速やかなご回答をお願いします。

(5)搬入道路選定時の検討資料の開示について
平成18年6月以降の説明会において何度も、搬入道路決定に至る具体的な資料の開示を求めていましたが、「道路検討の懇談会の議事録や具体的な資料はあるが、利害関係もあるので現状ではお見せできない」(竹沢室長)との返答でした。
それから3年以上も経過し、用地取得手続きも進んでいる状況で、当該資料の保存期間満了による廃棄処分の可能性もあり、無益な論争を終息させるためにも速やかなる開示を求めます。
また、速やかに資料の開示ができない場合には、?その理由と、?どの段階で公開できるか回答し、?該当する資料の表題リストの公開と、?該当する資料の永久保存処理、をお願いします。


(6)『<馬頭最終処分場基本設計書(案)><事業実施のための環境影響評価書(案)>の意見書』に対する県の回答(平成18年11月)について
平成18年10月に14項目について質問と要望を記載した『<馬頭最終処分場基本設計書(案)><事業実施のための環境影響評価書(案)>の意見書』を梅平地区住民一同として県に提出しました。
その後、同年11月に県から「いただいた意見および県の見解」が公開されましたが、梅平地区からの質問と要望に関しての回答は全くなされていません(一見、字数は埋めているが論点を意識的にずらし、全く答えになっていないのは誰が見ても明らかです)。
このような県からの回答に梅平地区住民の多くは、あきれると共に計画通りこのまま進んだ場合、住民の意思と生活環境を無視した最悪の状況になる事を実感いたしました。
当該部署が「『安全・安心な最終処分場』の情報を提供します!」(栃木県ホームページより)と謳うのであれば、速やかなご回答をお願いします。