僕が君たちを守る
数日前、ウチの採卵鶏の一番の年配格20羽が食肉鶏に左遷を命じられました。
産卵の能力が落ち、農園への経済的貢献度が下がったと判断されたからでした。
などと他人事のように語っていますが、この判断を下しているのは私です。
隣町にはこんな経済動物としての役目を終えた採卵鶏の処理をする“廃鶏屋さん”が存在します。
そこで屠殺、解体された鶏肉がどこへ行くのか私は良くは知りません。
当園の様に安全な飼料、抗生物質フリーで飼育されたニワトリは、味も良くて、食品としての価値もすこぶる高いものなのです。
しかし処理の問題や、販路の問題も有って、そんな廃鶏屋さんに持ち込まざるを得ないこともしばしばです。
今回は訳有って、うちで屠殺をすることになりました。
かごに詰められた雌鳥たちは、間もなく食肉への一歩を踏み出します。
と、そのとき、そのかごの上に、放し飼いになっていた雄鶏が一羽,すっくと飛び乗ったのです。
その光景はまるで「僕が君たちを守る」とでも言っているかのようでした。
ただそれが錯覚だったことはすぐに分かりました。
彼は、彼女らが首をはねられるのを横目で見ていただけでしたし、さらには、その首をつついて食べていたからです。
“生きていれば愛の対象。死んでしまったら食べ物。”
こんな割りきり方が上手なだけなのかもしれませんが。