那珂川川下り

たまには処分場問題を忘れて、アドベンチャーの旅へ。

という訳で、今日は長年の懸案だった(娘との約束)那珂川の川くだりに挑戦してきました。
ゴムカヤックは人からの借り物です。正直言って私はカヤックの経験はほとんどありません。その代わり、私も娘もライフジャケットをしっかり身につけて、船がひっくり返っても何とか生き延びられるように、という準備はきっちりしました。

支流の武茂川(むもがわ)から出発して、目指すは茨城の御前山です。
ゴムカヤックは、安定感も有って、ただ水に浮いているだけだったら何の恐怖心も無く気持ちの良い乗り物です。
けれど、瀬有り、淵有り、はたまた簗などの障害物があった場合、この船を巧みに操らねばならないのでした。この技術を初体験の川くだりで試行錯誤で身につけようというのだから、ちょっと危険(正直言って)でした。

川の流れに身を任せ〜♪ という訳には行かないのだということはすぐ分かりました。
漕ぎ出してすぐに、巨岩と巨岩の間を水流が一段落ちている所に来てしまいました。
怖くても船は止められません。行くっきゃないのですが、このまま行ったらどうなるのかということが自信を持って想像できません。まっすぐ突っ込むのがベストだろうということは分かるのですが、あせるとどっちのパドルをどうすれば思ったほうに船が向くのか分からなくなります。ここはほぼ運よく、船体が斜めの状態でしたが何とかクリヤーしました。
まっすぐに侵入しないと横波で水が船の中に入ってくるということはこの時点で体得できました。

なぜかカヤックのパドルは両端の櫂の向きが90度ねじれています。右と左を交互にかくと手首はおじぎをしたりのけぞったりを繰り返します。さいしょのうちは考えながらやってそれでも櫂が空(水)を切るということがしょっちゅうでした。

やっと慣れてきたなと思った頃、本流の広い流れの向こうに簗が見えてきました。
簗は上流から落ちてくる鮎を竹で作った簾に取り込むものですが、流れの上流に向かってじょうご型に鮎を簾に誘導する堰がこさえてあります。
この堰は鉄や木の杭を川底の砂利に打ち込んであり、そこに竹さおなどが横に渡してあるいわゆる障害物です。マナーか法律か知りませんが川幅全体にこの造作があることは無く、一部分は通路として解放してあります。 この通路の部分には両サイドに白旗を立てて遠くからも見えるようにしてあります。しかしこれが狭いのです。
技術レベルの低い初心者の私にとって、どの水流に乗せていけば自分の船がその通路にまっすぐ進入できるのか確信のもてないまま、いやおう無く堰に吸い込まれてゆく。これは恐怖でした。

ある簗では白旗の目印がありませんでした。どこだどこだと娘と不安を声にしながら進んでいくと、岸で番をしていたおじさんが、「アッチ、アッチ」というサインをくれました。
何となく通路のような所に不安なまま吸い込まれてゆくと、そこには底砂利に打ち込んだ鉄筋の棒が出ているではありませんか。カヤックがその上を通れば間違いなくパンクです。“クソオヤジ”と思っても船は止まりません。また新たな恐怖への旅は始まっているのです。

続いての難問は、釣り人です。
リールの付いた投げ竿でブッコミ釣りをしている人がいます。多分鯉釣りでしょう。
この人らは船が近づいてくるとあっちへ行けというしぐさのサインを送ってきます。
その度に流れを横切り、竿の反対岸にコースを変えなくてはなりません。「テメーが竿上げりゃいいだろ」は心の中の呟きです。

川下りで一番難しいのは、上流から見ると水の中にある障害物が見えないということです。一番怖かったのは釣り人を避けて白アワの中へ突っ込んでしまったとき、なんとそこが消波ブロックの畳になっていたのです。横向きのままブロックの間に船体がすっぽりはまってしまいました。水はどんどん船の中に入ってくるし、パドルを使って押してもひいても船体はびくとも動いてくれません。はまって動けなかったのは多分ほんの2〜3分くらいだったと思いますが、釣り人のニヤニヤした視線を浴びながら、必死にもがいていた私には結構長いつらい時間でした。

そんなこんなで、びしょぬれを乾かすのに2回も岸に上がって乾燥作業をしていたものだから、烏山を過ぎた所で時間切れギブアップとなりました。上がった所は下野大橋の下の船戸観光簗というところでした。本当は時間切れよりも、ぬれて体が冷えたのと、なれぬパドルで腕が筋肉痛になったからでした。

またやるかと問われれば・・・?

今は懲りているというのが正直な気持ちです。けれども下ってゆく(流されてゆく)途中で見たミサゴの見事なホバリングやヤマセミのつがい、コロニーから飛び立ったカワウの大集団、遡上するシャケの見事なジャンプ、悠然と空を舞うパラグライダー(これは人間です)などなど、短い時間でしたが印象に残った光景も多く、ほとぼりが冷めたらまたやってしまうかもしれませんねー。
  
娘談・・「私は弟がついて来たがるのを無理やり引っぺがしたりしていたので、車に乗るのでも、疲れま した。」